衆議院財務金融委員会において、信託業法の一部を改正する法律案(公益信託の信託業法適用除外)を主議題として質疑・討論・採決が行われ、起立多数で原案可決された。あわせて、スルガ銀行アパマン融資問題、森友事件公文書改ざん問題、電子帳簿保存法の中小企業対応、食料品消費税率、国債デフォルト論等について各会派が質疑を行った。
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信託業法改正と公益信託制度の展開
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海江田万里委員(立憲民主党、賛成寄り)は、公益信託の委託者勧誘において税制上の優遇措置を「殊更に前面に出した勧誘」をガイドラインで禁ずるべきと主張した。海江田委員は、相続税対策を強調した勧誘が保険業界等で問題を引き起こしてきた事例を挙げ、「税制の優遇を正面に出したような勧誘は駄目ですよぐらいは言わなきゃ駄目」と述べた。内閣府参考人・高角健志氏は、「税制優遇があるという事実を述べること自体は制限されるものではない」とし、虚偽告知の禁止は内閣府令に盛り込む予定と答弁するにとどまり、殊更な強調の禁止には消極的だった。討論において階猛委員(立憲民主党、賛成寄り)は、「税制上の優遇措置をセールストークとして受託者による委託者への勧誘を禁止することには消極的であった」と政府の姿勢を問題視し、反対の根拠の一つとした。
本委員会の主要議題である信託業法改正案は、公益信託を同法の適用対象から除外し、内閣府・都道府県知事による一元的な認可・監督体制へ移行するものである。村上智信委員(日本維新の会、賛成寄り)は「公益信託の普及を期待したい」と述べつつ、歴史的に信託業法が投資詐欺防止のために生まれた経緯を踏まえ、「悪用する人が出てくることを心配する」として、施行後も問題が生じた際には必要な再改正を求めた。辰巳孝太郎委員(日本共産党、賛成寄り)は「信託業法改正案には賛成」と明言した。高井崇志委員(れいわ新選組、賛成寄り)も「我が党は賛成いたします」と表明した。一方、階猛委員(立憲民主党、反対寄り)は討論において、「公益信託の受託に関し信託業法の規定の適用を除外することについて、現時点でその必要性も合理性も認められない」として反対を表明した。採決の結果、起立多数で原案のとおり可決された。
海江田万里委員(立憲民主党、反対寄り)は、公益信託における内部ガバナンスの観点から、信託管理人が一人でも可とされていることを強く批判した。海江田委員は、自身が評議員を務める公益財団法人では十三人程度の評議員による合議制を採っていることを例に挙げ、「一人は危ういですよ、非常に危ういですよ」と述べ、複数人による合議制を求めた。内閣府参考人・高角健志氏は、信託管理人の人数に法的規定はないものの「受託者の業務を監督するのに必要な能力を有しているかという実質を見て判断する」と答弁したが、海江田委員はこれを「答えていない、ごまかし」と批判し、一人制の危うさを重ねて指摘した。
一人は危ういですよ。非常に危ういですよ、これは。
高井崇志委員(れいわ新選組、賛成寄り)は、財務省が二〇〇二年に海外格付会社に対して「先進国の自国通貨建て国債はデフォルトしない」と述べた経緯を引き、現在も同じ立場を維持するよう求めた。高井委員は、当時より日本の国債発行残高はアメリカの四分の一程度にまで改善していると主張し、格付会社への抗議を改めて行うべきとした。加藤勝信大臣(中立)は、デフォルト単体ではなく「インフレ・ハイパーインフレ・金利急騰」を含む財政危機全体として考えるべきと述べ、「財政政策がきちんと運営されていけるのか、経済に悪い影響を与えていないのかを判断した上で財政運営を進めなければならない」と直接的な賛否を避けた。高井委員は「デフォルトはしないということで見解は一緒でいいか」と重ねて確認したが、大臣は財政危機全体の文脈での判断が必要と繰り返し、議論はかみ合わないまま次の国会に持ち越された。
公益信託を信託業法の適用除外とすることの是非について、政府・与党側と野党側で意見が分かれた。加藤勝信大臣(賛成寄り)は、「内閣府等における制度・運用において信託業法が求めるものが担保されており、二重の規制を排除するという考え方で整理した」と明言した。金融庁・油布政府参考人も、新しい公益信託法には行為準則等が法律上置かれており「信託業法と同水準の規制監督権限が確保されている」として適用除外を問題ないと答弁した。一方、海江田万里委員(反対寄り)は、「一定金額以上の規模の信託には信託銀行をかませるか、信託業法の規制を残すべき」と主張し、「金額の多寡にかかわらずとは言えない」と反論した。階猛委員(反対寄り)は討論において、「一定金額以上の資産を預かる公益信託について引き続き信託業法の規制を及ぼすことにも消極的であった」政府の姿勢を批判し、法案の必要性・合理性が認められないとして反対を表明した。
公益信託の認可・監督を担う内閣府の体制整備について質疑が行われた。海江田万里委員(賛成寄り)は、現在、内閣府所管の公益法人約二千六百五十五件を六十三人で監督していることを踏まえ、新たに公益信託も加わることから、人員の増員を明確にするよう求めた。また、これまで三年に一度としていた立入検査の頻度を新制度でも維持し、厳格に実施することを求めた。内閣府参考人・高角健志氏は、「DXの推進等による業務効率化を図りながら必要な体制整備に努める」と答弁し、増員を明言することは避けた。立入検査については「定期的なサイクルで行うことを基本的に想定している」とし、具体的なサイクルはガイドラインで定めると述べるにとどまった。討論において階猛委員(反対寄り)は、「六十三人をどうするか不明確」であることを法案への反対理由の一つとして挙げた。
信託業法改正により、公益信託の受託者がこれまでの信託銀行から、NPO法人・公益法人・個人へと拡大される点について議論が行われた。村上智信委員(日本維新の会、賛成寄り)は「受託者が増えることで公益信託が普及していく」と歓迎し、地元でも公益信託に関心を持つ人がいるとして普及に期待を示した。一方、海江田万里委員(反対寄り)は、NPO法人やその他法人が起こした問題が「枚挙にいとまないほど新聞に出ている」と指摘し、不正リスクやガバナンスの脆弱さへの懸念を示した。また、マネーロンダリングや海外テロ組織への送金といった犯罪への悪用リスクも挙げ、「これまで以上に厳格な監督・検査が必要」と求めた。
村上智信委員(日本維新の会、賛成寄り)は、貯蓄から投資への推進に賛成と明言し、「日本経済の成長のために投資が必要」と述べた。特に、医薬品・医療機器のようにリスクが高くて資金が集まりにくい分野へのベンチャー投資がアメリカと日本の製薬業界の差につながっているとの分析を示し、日本でもベンチャーへの資金供給が必要と訴えた。加藤勝信大臣(賛成寄り)は、「家計が安定的な資産形成に向けてより多くの資金を貯蓄から投資に向け、企業がその資金を成長投資に回し、その恩恵が資産所得として各家計に還元されて更なる投資・消費につながるという好循環を促すために資産運用立国の取組を推進している」と答弁し、引き続きスタートアップ等への成長資金の供給促進に取り組むと明言した。
村上智信委員(日本維新の会、賛成寄り)は、投資信託による未公開株(非上場株式)への投資拡大を強く支持し、「何%組み入れるかを明示すれば制限なしでよい」との個人的意見を表明した。金融庁・油布政府参考人は、非上場株式は有価証券として組入れ禁止ではなかったが、評価方法・組入れ比率の規定がなく実務上行われてこなかったと説明した。昨年、投資信託協会の自主規制規則改正により公正価値測定による時価評価と純資産の一五%以内という上限が設けられ、二〇二四年九月以降、実際に非上場株式を組み入れた公募投資信託が複数組成され始めていると述べた。加藤大臣(賛成寄り)は、「投資信託への非上場株式の組入れを実務上可能とするための環境整備を引き続き推進する」と明言した。
私の個人的な思いとしては、そういうふうな、何%組み入れるということをはっきり明示しておけば何%でもいいというふうになっていけばいいなというふうに思います。
資産運用立国実現プランに基づき、先ほど答弁させていただきましたが、投資信託への非上場株式の組入れを実務上可能とするための環境整備、また、家計の資産を運用する資産運用会社には、有望な企業を見極め、家計の資産形成を支える良質な運用商品を組成していくことを促していくこと、さらには、スタートアップを含む上場企業へのコーポレートガバナンス改革を進め、企業の投資対象としての魅力の向上を図っていくなど、引き続き、スタートアップ等への成長資金の供給促進のための取組を進めていきたいと考えております。
辰巳孝太郎委員(日本共産党、賛成寄り)は、伊藤豊監督局長が元財務省秘書課長として二〇一八年六月の調査報告書をまとめた一人であることを踏まえ、同報告書の記述に基づいて佐川元理財局長による改ざん指示の有無を追及した。辰巳委員は、報告書に「理財局長は文書を外に出すべきでなく最低限の記載とすべきであると反応した」とある記述を引用し、「普通に考えたら指示だ」と主張した。財務省・窪田政府参考人は「具体的な指示はなかったものの方向性を決定づけた」という報告書の表現を繰り返したが、辰巳委員は「身内がまとめた調査報告書は不十分」と批判した。また、検察に提出された十七万ページの決裁文書等で重要部分が欠落していたとされる問題にも言及し、「第三者的な立場での調査、あるいは国会が関与しての調査が必要」と改めて求めた。加藤大臣は「調査報告書に書かれていたことが全て」との立場にとどまった。
やはり、第三者的な立場での調査というのを改めてやって、森友事件の改ざんの真相を明らかにする、そのことを改めて申し上げて、私からの質問を終わります。
岸田光広委員(国民民主党、賛成寄り)は、令和六年一月から義務化された電子帳簿保存法に基づく領収書デジタル保管義務について、ITに不慣れな小規模事業者から「システム導入の手間とコストが大きく事務負担が大き過ぎる」との訴えを受けたとして政府の対応を質した。国税庁・小宮政府参考人は、「人手不足、システム整備の資金不足、システム整備が間に合わない」といった事情がある場合には令和五年度税制改正で設けられた猶予措置が適用されると説明した。岸田委員は、この猶予制度の存在を知らない事業者が多いとして「周知の徹底」と「きめ細やかな支援策」を強く求めた。加藤勝信大臣(賛成寄り)は、「猶予措置の周知をしっかり図るとともに、中小企業等における業務デジタル化の恩恵を広げるための環境整備に引き続き取り組む」と明言した。
海江田万里委員(立憲民主党、反対寄り)は、G7諸国の中で日本の食料品消費税八%が最も高いとの問題提起をし、絶対値として高いという認識を持っているかどうかを加藤大臣に質した。加藤勝信大臣(中立)は、英国・カナダはゼロ%、ドイツは七%等と各国の税率を示した上で、「OECD加盟国の基本的な食料品の税率を機械的に平均すると八%程度」であると述べ、日本の八%が突出して高いとの認識は示さなかった。また、「社会保障の大切な財源であり、食料品の消費税率の引き下げは適当ではない」と改めて明言した。海江田委員は「意見が違う、また今度ゆっくりやりましょう」として議論を持ち越す姿勢を示した。
私は、特にG7の国々の中では日本の食料品は、EUのように二〇%あるようなところでも低いわけですから、あるいはゼロ税率なんですから、日本の食料品の八%というのは高い、ほかの国よりも、どこよりも高い、これは事実ですけれども、そういう認識を持っているかどうかということについて大臣の認識を伺うこと、これは変える変えないは別ですよ、事実として、絶対値として高いということ。
いずれにしても、消費税率、また食料品の消費税率については、これまでも申し上げておりますように、社会保障の大変大事な財源ということで引下げは適当ではないということは申し上げさせていただいているところでございます。
信託業法改正案は、与党・日本維新の会・日本共産党・れいわ新選組が賛成し、立憲民主党(階委員)が反対したものの、起立多数で可決された。立憲民主党は、内閣府の監督体制の不明確さ、税制優遇を用いた勧誘規制の不備、一定金額以上の信託への信託業法規制維持に消極的な政府姿勢を反対理由として挙げた。スルガ銀行問題については、加藤大臣が「深く関与し必要な措置を取る」と表明したが、具体的な解決策の内容は精査中として明らかにされなかった。
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